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雨が近づいていた。
さっきまで近くの子供の声が聞こえていたはずだったのに、
窓の外もすっかり静まり返って、低い雲が西の山際から迫ってきていた。
私は窓の外が見えるベージュのソファーにもたれて、静かに息を吐く。

輪郭がぼんやりとした、この時間が好きだ。
週末に夫の友人と行くゴルフのこと。
晩御飯に昨日の鶏肉の残りを使わなければならないこと。
息子のひじの擦り傷か治りかけていること。
とりとめもなく思い浮かべて、でもそれだけだった。

ふと、ぱたんぱたんと小屋の屋根を雨粒がたたく。
窓に目をやると、空はさっきよりもはるかに暗い。
雨音は不規則にスピードをあげて
すぐに気分がのったパーカッショニストのように制御を失った。

玄関へ慌ただしい足音が響く。
続いて、あーっという息子の声。
「セーフ」
迎えに出ると彼はそういった。
髪はシャワーからあがったばかりのように水が滴っていたが、
その間からはさも危なかったと言わんばかりの目が覗いていた。

「アウトだよ」
私は笑いながらそう言って
手に持っていたタオルを頭にかぶせてやった。
くすぐったそうに身をよじって部屋へ向かおうとする小さな肩をつかむ。
まるで猫か鼠のようなこの小さなボーイフレンドが
分別のある顔をして親をいたわるような、
そんな未来はまだまだ遥か永遠の向こうだ。
私の手をすり抜けた濡れ鼠は水滴をキラキラと振りまきながら階段をかけあがった。